物流業界2024年問題の課題と解決策

物流業界2024年問題の課題と解決策

 物流業界がもつ大きな課題が、トラックドライバーの人手不足です。産業別の欠員率は、運輸業は全体の約2倍、貨物自動車運転手の有効求人倍率も全産業の約2倍となっています。

加えて、2024年にトラックドライバーの労働時間に制限が設けられる「物流の2024年問題」が間近にせまっています。ただでさえ、物流が滞っているところに労働時間の制限がかかると荷物が運べない状況になってしまいます。物流の2024年問題に対して物流業界は労働の仕組みを見直す必要があります。

本記事では物流業界の現状を踏まえながら、物流の2024年問題に対する課題と解決策をご紹介します。

物流の2024年問題とは

物流の2024年問題とは、働き方改革関連法によってドライバーの労働時間上限が設定されることで生じる問題です。

2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されます。これは、月平均にすると80時間となります。

トラックドライバーの従来の時間外労働時間の上限は月あたり約100時間と言われています。しかし2024年からの法制定後は月あたり約80時間までしか時間外労働ができなくなる計算になります。

つまり、時間外労働時間を100時間利用して運搬していた場合、法制定後は月あたり約20時間分の荷物が運べなくなるという問題が起こります。

物流業界の現状

物流の2024年問題の以前に、物流業界では、さまざまな問題を抱えています。

まず、物流業界の現状について確認しましょう。

物流業界の現状1:トラックドライバーの人手不足

現状トラックドライバーの人手不足も深刻になっています。日本の人口が減少傾向にあるため全産業で人手不足は深刻ですが、物流業界はより顕著に人手不足に悩んでいます。

厚生労働省が令和2年2月に行った調査によれば、全産業の欠員率が2.8%に対して運輸業の欠員率は5.7%と約2倍の差が開いており、運輸業の人手不足が浮き彫りになっています。

また、有効求人倍率は全職業が1.35%であることに対して、トラックドライバーは2.68%で、こちらも約2倍の差が開いています。

つまりトラックドライバーは、求人数に対して半数しかいない状況です。

物流業界の現状2:荷役・荷待ちの時間が長い

物流業界では荷役と荷待ちに多くの時間を費やしているため、貴重な輸送リソースを十分に活用できていないことも問題として挙げられます。

荷待ちや荷役は長時間労働の一因として考えられています。

国土交通省が令和2年度に報告した「トラック輸送状況の実態調査結果」は次の通りです。

荷役時間に関して

1運行におけるトラックドライバーの平均荷役時間は、
 「荷待ち時間がない運行」の平均荷役時間は 2 時間 44 分
 「荷待ち時間がある運行」の平均荷役時間は 2 時間 49 分

といずれも約3時間弱と、
運転時間が6〜7時間であるのに対して、拘束時間における割合が高くなっています。

トラックドライバーの拘束時間・荷待ち時間に関して

・1運行におけるトラックドライバーの拘束時間は、
 「荷待ち時間がない運行」の平均拘束時間は 10 時間 38 分
 「荷待ち時間がある運行」の平均拘束時間は 12 時間 26 分

 と約2時間の差

・1運行当たりの荷待ち時間の平均は1時間34分

と報告されています。

このように、ただでさえ少ないトラックドライバーの時間が荷待ち時間に多く割かれてしまっているのが現状です。

物流業界の現状を踏まえた課題

物流業界の現状を踏まえ、2024年問題で拍車のかかるトラックドライバー不足を乗り越えるための課題としては、例えば以下の3つがあります。

(1)荷物の積み下ろしに時間がかかる
(2)荷物の積み付けに無駄がある
(3)輸送ルートに無駄が多い

課題ごとに詳しく見ていきましょう。

(1)荷物の積み下ろしに時間がかかる

荷主は、1つのトラックにたくさんの荷物を積もうとするため、多くの場合、荷物の積み下ろしは、手積み手下ろしで行われています。しかし、手積み手下ろしでの積み下ろしは、多くの時間を費やしてしまいます。

また、手積み手下ろしの場合、バラバラの荷物を取り扱うことが多いです。
荷物がバラバラなままだと、人が荷物を一つずつ積んだり、下ろしたりしなければなりません。

つまり、

たくさん荷物を積もうとすると、荷物をバラバラに扱うため積み下ろしに時間がかかる
積み下ろしの時間を短縮しようとすると、荷物をまとめる

ので、「まとめ方によっては積載効率が悪くなってしまう」という課題があります。

(2)荷物の積み付けに無駄がある

荷物には様々な形状があるため、積み付け方によっては無駄な空間が生じてしまいます。 

荷役の時間を短縮するため、フォークリフトでトラックに荷物を積めるように、荷物をパレット化することは一般的になっています。

しかし、パレットによる輸送は、積み付けに無駄を生じさせる原因にもなります。

パレットという限られた場所に荷物を積み付ける場合、大きさも形状も異なる荷物を積み付けるため、パレット内に小さな隙間を生み出します。そして、小さな隙間が積み重なると大きな隙間を生じさせてしまいます。

また、パレット上に上手く荷物を積み付けられたとしても、パレットがトラックに上手く積み付けられないケースもあります。

このように、

  • パレットに荷物を積み付ける時の無駄
  • パレットをトラックに積み付ける時の無駄

が発生し、結果としてトラック1台に対しての積載率が大幅に低くなってしまうという課題があります。

(3)輸送ルートに無駄が多い

複数の場所へ貨物を輸送する場合、輸送ルートに無駄が発生しているケースが多くあります。輸送ルートが複雑になると、適切なルートの計画は難しくなります。

  • 配送トラックの大きさを考慮してどこに配送するどの荷物を積むのか
  • どのトラックをどの配送先に割り振るのか、配送順はどうするのか
  • 荷物の納期や、配送距離などの条件を考慮する必要がある

など多くの考えるべきことがあり、その中で最適な輸送ルートを計画しなければなりません。

多くの場合、担当者が配送計画を立てているので、急な荷物の追加や、トラックの遅延に対応することが難しくなっています。その結果、現状では輸送ルートに無駄が多いことが課題となっています。

トラック輸送における問題の解決策

上記で挙げた課題に対しての解決策の例を記載します。

(1)荷物の積み下ろしにかかる時間を削減する

形状がバラバラな荷物をパレットに積み付け、パレットを一つの単位として輸送することで、積み下ろしにかかる時間を削減することができます。

例えば、荷物がパレットに積まれていれば、トラックへの荷物の積み下ろしは、

  • パレット単位でまとめて積み下ろしができる
  • 人力ではなく、フォークリフトなどの機械を利用できる

ため、荷物の積み下ろしにかかる時間を削減することができます。

(2)荷物の積み付けの無駄をなくす

荷物の積み付けは、パレットに積む場合、トラックの荷台に積む場合、コンテナへ積む場合と、様々なケースがあります。どのケースでも、積み付けソフトを活用することで、荷物の積み付けが効率化ができます。

積み付けソフトは、荷物の積み方の条件をみたし、効率よく積み付ける計画を立てることができます。

例えば、

  • 荷崩れしないように、大きいものが下になるように積む
  • おろす順番を考慮して荷物を積む
  • 壊れやすいものは上に積む

といった条件にしたがって貨物をパレット・トラック・コンテナに積み付ける計画を立てることができます。

実際に、積み付けの現場では、担当の方が必要な条件を満たして積み付けを決定しています。このような担当者が持っている現場のノウハウを反映して最適な計画を立てるためのシステムを構築している物流現場も存在します。

積み付けソフトを利用したり、システム化されていれば、誰でも簡単に積み付け計画を立てられるので、荷物の積み付けの無駄をなくすことができます。

(3)輸送ルートを最適化する

無駄が多い輸送ルートで輸送している場合、システムを導入することによって、輸送ルートを最適化することができます。人員やトラック、時間などの様々な制約を考慮した、最適な輸送ルートを導き出してくれます。

最適化された輸送ルートでは、経験が浅いトラックドライバーの方でも時間的な余裕を持って、安全に配送することができます。

一方、輸送ルートの無駄の一番の原因は「復荷が無いこと」や「時間制約が強いこと」です。「復荷が無いこと」や「時間制約が強いこと」といった条件の下では、輸送ルートの最適化を行っても大して効率は上がりません。

「時間制約が強いこと」の例だと、「10日後に持っていかなければならない」といった条件を「7日後から10日後の間に持っていけばいい」などの余裕のある日数にできないか、制約となっていることを工夫できないか検討することが効率化のポイントとなります。

システム導入の注意点

積み付けの無駄をなくしたり、輸送ルートを最適化するにはシステムの導入が向いていると解決策でも紹介しました。

すでにパッケージソフトとして販売されているものもありますので、現場にあったパッケージソフトがあれば、導入を検討することも一つの解決策になります。

一方で、パッケージソフトを導入するだけで解決できない場合もあります。

  • 「多くの機能が備わっているが、自社で使う機能は一部だけだったため、改善費用とシステム導入の費用が釣り合わなかった」
  • 「自社の取り扱う荷物は形状がバラバラだから、特別な機能が必要だけど備わっていなかった」
  • 「課題の本質が別にあり、システム導入で解決できるものではなかった」 

などの問題が発生する場合があります。

システムを導入する前には課題の本質をよく考えることが重要です。

自社にあうパッケージソフトが見つからない場合は、システム会社にシステムを構築してもらうのも一つの方法です。

課題の本質を見極められない場合は、物流とITに詳しいコンサルタントなどの専門家に相談するのも良いでしょう。

物流業界の目指すべき姿

2024年問題や、物流業界の現状を踏まえた上で、物流業界は、さまざまな関係者の皆さまと協力しながら、お互いにメリットを得られるよう物流の仕組みを良い方向に変えていく努力が求められています。

  • 法令を守りつつ自社の利益を維持する。
  • お客様が求めている納期に間に合わせて物を運ぶ。
  • トラックドライバーをはじめとした従業員の負担を減らす。

など、すべての関係者が利益を享受できる体制こそが物流業界の目指すべき姿となります。

まとめ

本記事では2024年問題と物流業界の現状、課題の例と、課題に対する解決策を紹介しました。

荷主を含め、物流業界の皆様は自社の課題に真剣に向き合っていることかと思われます。

業界全体で上手く回るために、何を改善しなければならないのかを考慮しながら、問題に取り組むことが重要になります。

とりわけ労働者不足がひっぱくしている物流業界においては、仕組みのDX化などを先手先手で推し進める必要に迫られています。

将来、労働者が減ったとしても、必要な物流を止めないために、いまできることから、スモールスタートしておくのも一つの方法です。