荷主が、自ら配車業務の遂行を願う理由

荷主が、自ら配車業務の遂行を願う理由

「運送会社に配車を任せてはいられない!?」、荷主ための配車システムとは?【前編】

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

 「もはや運送会社に配車を委ねるような余裕はないんですよ」

 かつて、筆者は配車システムの営業を務めていた。今から10年ほど前のことである。当時から、配車システムに興味をもつのは、運送会社よりもメーカー、小売、卸などの荷主企業の方が多かった。だが今に至るも、世の中に出回る配車システムの多くは、荷主ではなく、運送会社を主なターゲットとしている。

 「荷主も利用できる配車システム」ではなく、「荷主のために最適化された配車システム」は、なぜ必要とされるのか。前編では、荷主が自ら配車を行いたいと考える理由から考えていこう。

JITに対応できない部品メーカーの悩み

 自動車部品を製造するA社は、納品先が要求するJIT(Just In Time)に対応することができず悩んでいた。

 競合他社は、一日に複数回の納品を行っていたが、A社は対応できず、A社製部品の採用率は競合他社から大きく水を開けられていた。

 「運送会社がもっと柔軟に対応してくれれば…」──A社の物流担当者は不満を感じていた。運送の実務を担う運送会社の配車担当者は、「JITに合わせて複数回の納品を行うのは無理です」と言っている。だが競合他社は行っているのだ。そのことを配車担当者に伝えると、「もちろん、運賃をアップしてくれれば対応はしますよ」と答えてくる。「A社は、競合他社に比べて運賃が安いんじゃないですか?」と、配車担当者は言っているのだ。

 競合他社の部品価格が、A社に比べて高いわけではない。つまり、より高い運賃を捻出できるだけの原資があるとは思えない。

 A社物流担当者は、配車計画をきちんと検証し、より効率的な配送を実現すれば、JITに対応できるのではないかと考えている。

 だが、A社に配車に対するノウハウはない。

 だから、配車システムを導入することで、運賃等の配送コストをアップさせずにより効率的な配送を実現し、JITに対応したいと考えているのだ。

荷主企業の間で高まる、配車システムへのニーズ

 筆者が配車システムの営業として活動していたとき、引き合いの8割は、製造、卸、小売などの荷主企業だった。だが、もう10年も前の話である。そこで、知己の配車システムベンダー営業らに聞いてみたのだが、8割とは言わないまでも、今も荷主企業からの引き合いは多いという。

 前述したエピソードは一例に過ぎない。

 「配送が、うちのサプライチェーンのボトルネックになっているんだよ!」──ある専門商社B社の物流担当部長は、経営陣から糾弾されたそうだ。

 配送プロセスは、しょせん物流プロセスの一部分にしか過ぎない。
 さらに言えば、物流プロセスは、サプライチェーンの一部分に過ぎない。

 「調達、品質、マーケティングや営業は、改善を進め、収益改善を頑張っているのに、配送が足を引っ張っているんだ!」、全社会議で追求された物流担当部長は反論した。

 「物流センターは自社で運営しているので、改善が進んでいます。しかし、当社はトラックを保有していません。だから、どうしても配送プロセスは運送会社に委ねざるを得ません。では、当社もトラックを保有し、自社配送を行いますか?」

 すると、経営陣は、さらに反論してきたそうだ。

 「トラックを保有する必要などない。要は、配送計画を当社で立案し配送品質を自社でコントロールすれば良いだけの話だ」

 経営陣の言うことは、理論上は正しい。

 だが、机上の空論であることは、B社の経営陣も分かっている。商社であるB社に、配車のノウハウなどない。だから、B社の物流担当部長も、配車システム導入を本気で検討しなければならないと考えた。

 だが、ここで新たな課題が立ちはだかる。

 配車システムを導入すれば、確かに配車計画の立案は可能になるだろう。だがその配車は、B社経営陣が満足する結果を出すことができるのだろうか?

荷主と運送会社。異なる配車の目的とは?

 運送会社にとって配車とは、売上を確定し利益を生み出す経営の柱である。筆者は運送業界の大先輩から、「優秀な配車担当者にかかれば、利益は2倍、3倍の差がつくこともある」と言われたことがある。

 一方、荷主企業における配車の目的は少し事情が違う。三つ挙げよう。
 一つ目は、配送コストの削減である。

「物流危機とフィジカルインターネット」(経済産業省 2021年3月)より

 これは、フィジカルインターネット実現会議において、経産省が現在の物流危機をまとめた資料の一部である。

 端的に言えば、これまで荷主は、運送会社に対し運賃を買い叩くことで配送コストを削減してきた。だがご承知のとおり、ドライバー不足はもはや社会問題となった。運賃を買い叩けば運送会社に逃げられて、配送そのものが成り立たなくなる。

 そのため、荷主自らが配送効率の改善に乗り出し、配送コストの削減を図らなければならなくなっているのだ。

 二つ目は、A社のように顧客満足度の向上である。A社のケースではJITによる時間指定だったが、最近では積み卸し時間を予約するバース管理システムを導入する物流センターも増えている。バース管理システムは、都合の良い時間に積み卸しを予約できる反面、出入りの多いEC系物流センターなどでは希望の時間に予約が取れず、配車計画立案に苦慮するケースも増えている。そこで、より精緻な配送計画の立案が必要となる。

 他にも、配送先でより複雑な荷役(例えば棚入れなど)を要求されるため、個々の配送先事情に応じた複雑な配送計画立案を求められるケースもある。

 配送先となるお客さまのニーズを満たしつつ、同時に効率的な配送を行うために、配車システムが必要なのだ

 三つ目は、B社のようにサプライチェーン全体の最適化を図るケースである。

 この場合、既存の配送リソース、すなわち現在取引のある運送会社や倉庫会社だけではなく、より幅広い視野で配送計画を立案する必要がある。

 例えば、今までは「配送=チャーター便」と盲目的に手配していたけれども、実際には貨物の一部を路線便に委ねたほうがより効率的なケースも有り得る。

 例えば、「九州行きの貨物は、一度岡山にある倉庫にデポする」と考えていたけれども、ケースバイケースで直送を織り交ぜたほうが効率的なケースも有り得る。

 物流プロセスの前後にある生産計画や販売計画なども勘案した上で、本当に最適な配送計画を立案するのは、荷主ならではの事情である。

 いずれのケースも、運送会社とより緊密な協議を行えば実現できることではある。
 だが、その協議を疎まれるケースもあれば、そもそも運送会社側に荷主側の要求を満たすようなスキルがないケースもある。

 だから、荷主自らが、配車を手掛ける必要性が高まっているのだ。

 だが残念ながら、これまで配車を運送会社に委ねてきた荷主に、配車を行うノウハウはない。一見理想的と思われる配車計画を立案したところで、運送会社側に「これでは改善基準告示を満たせませんよ」などと計画の不備を指摘されては元も子もない。

 ゆえにITを駆使しスキのない、運送会社を納得させられる配車計画を立案する必要がある。そのための配車システムなのである。

 後編では、荷主向けの配車システムに必要な要件を考えていこう。