「薬屋ではなく医者である」と自負する構造計画研究所の課題解決能力

「薬屋ではなく医者である」と自負する構造計画研究所の課題解決能力

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

 現場ブロック──業務改善や標準化といった文脈でしばしば登場するキーワードである。高い技術を持った、職人気質の現場担当者らが、業務改善や業務プロセス標準化を阻むことを指す。
 前項で取り上げた貨物の積み付けなど、物流現場の改善においても、多くの企業やコンサルティングファームが、現場ブロックに玉砕してきた。

 構造計画研究所は、自身のコンサルテーションを称して、「薬屋ではなく医者である」と説明する。筆者は、この言葉にこそ、これまで数多の現場の改善を阻んできた現場ブロックを解消するヒントがあると考えている。

改善や標準化を阻む、現場ブロックの課題

 筆者自身、現場ブロックは何度も経験してきた。
 かつて筆者は、配車システムの営業兼コンサルタントとして活動していた。ある運送会社では、配車システムを導入したものの、配車担当者がシステムを使うことを拒否したケースがあった。

 システムにログインしたかどうかは、システムログで確認できる。
 筆者が同社を訪問し、配車担当者につきっきりでサポートした日以外、まったくログインしていないのだ。配車システム導入にあたり、旗振り役の役員とともに、当の配車担当者は常に打ち合わせに参加していた。今から考えれば、一言も反対意見を言わなかったのも、最初からシステムを触るつもりがなかったのだろう。面従腹背にしても、あまりに露骨である。

 「さすがにこれはマズイんじゃないですか…?」──一ヶ月ほどが過ぎ、私は旗振り役の役員に直訴した。すると、役員はしかめっ面でこのように答えた。

 「またか、あいつら…」

 そう、初めてではないのだ。
 同社では、過去にもシステム導入をしたものの、それを放置するという不埒な行為を繰り返し行われていた。

 同社における現場ブロックは、あまりにも極端ではある。だが、業務改善を行ったり、新たなシステムを導入する上では、程度の差こそあれ現場ブロックが発生するものだ。

 そもそも、対象となる業務のコアとなる技術やノウハウは、熟練の現場担当者らが暗黙知として抱え込んでいる場合が多い。こういった方々は職人気質を持つがゆえに、現場ブロックの当事者となってしまうケースが少なくない。

人情コンサルティング──構造計画研究所が選ばれる理由

 現場ブロックを防ぐ、もしくは克服する方法は、いくつかある。

 ある大手SIerの子会社であるコンサルティングファームは、現場ブロックをしそうな現場担当者と呑みに行く(※プロジェクト内で、きちんと呑み代を予算化しているそうだ)ことで、コミュニケーションを図るという。
 トヨタ生産方式を布教する先輩コンサルタントは、「現場ブロックなんて、正論で突破すればいいんだ!」と強硬派を自認していた。

 構造計画研究所では、現場ブロックの当人、すなわち暗黙知の持ち主を先生に仕立てるのだと言う。

 そもそも、なぜ現場ブロックが発生するのか?
 その理由は、暗黙知が形式知化され、システム導入などによって標準化が進むことによって、自身の価値が減少、もしくは存在意義がなくなり、クビになる可能性があるからだろう。
 1970年代、モータリゼーションの拡大に伴い、自動車産業は次々と製造ロボットを導入し、労働者らの反発を招いた。仮に、当時の労働者らを解雇することなく、新たな役割を与えられていたら、反発は起きなかったのではないだろうか。

 現場ブロックの原因としては、他にも「面倒くさい」、すなわち改善や新たなシステム導入・IT化に対する反射的な拒否感や、「今のままでいいじゃないか?」という現状維持バイアスなども原因となる。

 だからこそ、構造計画研究所では、足繁く顧客企業に通い、現場担当者とコミュニケーションを取り、時間をかけて信頼を築いていくという。そして、現場を支えてきた技術を持った担当者らに、ソリューションを評価する先生という新たな役割を担ってもらうそうだ。

 世の中には、さまざまな業務分析の手法が存在する。
 だがそのいずれも、現場を支えてきた人たちが本気で協力を拒んだら、結果を出すことはできない。
 だからこそ、頭でっかちにならず、人肌のぬくもりを感じるような、血の通ったコミュニケーションを重視する構造計画研究所の方法論には価値がある。
 人情コンサルティングとも呼ぶべき構造計画研究所のスタンスがあるからこそ、同社の持つ優れたソリューションが活きてくるのだろう。

「薬屋ではなく医者である」

 以前、あるメディアの依頼で、構造計画研究所を取材した時、担当者はこのように語った。

 「構造計画研究所は、薬屋ではなく医者です」

 薬とはパッケージソリューションの比喩である。
 対して、医者とは、保有する薬にこだわることなく、患者の病気を治そうとする姿勢を指す。

 率直に言えば、最近のソリューションベンダーは、すべて医者であろうとしている。だが、医者であろうとすることを貫くことができているベンダーは、どれほどあるのだろうか?

 一例を挙げよう。
 初見のお客さまから、「積み付けシステムの見積が欲しい」と言われたとする。構造計画研究所では、「それは無理です」とお断りするそうだ。

 もちろん、ベンダーである以上、お客さまから見積提出を求められ、それに応える姿勢は間違いではないし、むしろ当然である。だからこそ、そういう構造計画研究所に見切りをつけ、他のベンダーとの交渉を進めるお客さまも少なくないという。

 にも関わらず、再び構造計画研究所に相談してくるお客さまが一定数いるという。

  • 複数のベンダーから見積書を取り寄せたものの、決めきれなかった。
  • 他のベンダーに相談をしたものの、課題解決に至らなかった。

 パッケージソリューションで課題解決をすることができたお客さまは、それで良い。パッケージソリューションには、手頃な価格感で、豊富な機能を手にすることができるというメリットがある。いわば、薬屋のアドバンテージである。

 問題は、市井の薬で病気が治らなかった、もしくは「薬では治らない」と判断したお客さまである。中には、「薬屋は湿布薬を処方してきたけれども、この腰痛には湿布薬では治せない、他の原因があるのではないか?」と考えた方もいるだろう。

 先に挙げた社内ブロックは一例にすぎない。
 現場担当者ではなく、「システム導入を図れば、なんとかなるだろう」と安直な発想をする上層部を説得するのも、医者の役目である。

 自社にマッチした、最適なシステム投資のあり方、社内リソースの配分を共に模索してくれるのも、医者の役目だと期待したい。

 もちろん、病気を治すのは、最終的には患者自身の意志と行動であって、医者はそのサポーターでしかない。
 構造計画研究所が言うところの「薬屋ではなく医者である」とは、お客さまの抱える課題に対し、数学的に解析することで、最適な解を導き、お客さまが経営判断を下すお手伝いをすることも含まれている。

 個人的なことだが、筆者は医者が嫌いで、体調が悪くとも市販薬で治そうと考えるタイプである。
 だが、すべての病気が薬で治すことができないことも知っている。
 だからこそ、医者が必要なのだ。

 率直、構造計画研究所は面倒くさい会社だと思う。
 「あなたのお話を深く伺わないと見積は出せません」と言われたお客さまの中には、困ってしまうケースもあるだろう。

 現代の企業が求められる課題解決能力は、とても高く、そして困難である。DXなどは、その良い例である。
 本気で業務改善を望んだり、DXを実現させようとすれば、そもそも手間がかかるものだ。お客さまの手間と意欲に対し、真正面から向き合う覚悟があるからこそ、構造計画研究所は「薬屋ではなく医者である」と自負するのであろう。

 もし、市井のパッケージソリューションでは解決できない、もしくは解決が難しいと思われる課題を抱えているのであれば、構造計画研究所に相談してみると良い。

 手間は掛かるかもしれない。
 面倒だと感じることもあるかもしれない。
 だが、間違いなく新たな一歩を踏み出したことを、あなたはきっと実感できるはずだ。