積み付けシステムは、熟練作業員らの知恵と経験を超えることができるのか?

積み付けシステムは、熟練作業員らの知恵と経験を超えることができるのか?

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

 積み付けは、職人技である。それゆえに標準化、ましてやシステム化は難しい。

 かつて筆者は引越屋のトラックドライバーであった。自分で言うのもなんだが、積み付けは上手い方だったと思う。
 自身の積み付けテクニックをマニュアル化し、後輩たちに伝えたい──そう考え、試したこともあったが、結局断念した。自分でも、自身の積み付けテクニックを体系化・言語化できなかったのだ。それどころか、他ドライバーと自身の積み付けテクニックの違いがどこにあるのか、その要因を探ることすらできなかった。

 だが、積み付けを…、それも個社特有の貨物輸送や積み付け事情を鑑みたカスタマイズを施した上で標準化できるシステムがあるという。

 なんだか負けた気分である。
 早速検証してみよう。

なぜ手積みは嫌われるのか?

 筆者は、Yahoo!ニュースに物流をテーマにした記事を執筆している。Yahoo!ニュースでは、読者がコメントを投稿できる。物流をテーマに執筆すれば、物流従事者、とりわけトラックドライバーと思しき人からのコメント投稿が集まる。

 ある記事で、筆者が手積み手卸しの運送案件を運送会社に紹介したエピソードを紹介したことがあった。

 「高齢化が進む運送会社に、手積み案件を紹介する時点でこいつ(※筆者のこと)アウト!」
 「手積み手卸しの仕事を紹介しようという発想がそもそもおかしい」

 主にトラックドライバーと思しき方々からの批判コメントが集中した。
 手積み手卸しの運送案件は、なぜ嫌われるのだろうか。

  1. 手積み手卸しを行うトラックドライバーの身体負担が大きい。
  2. 手積み手卸しを行うと荷役に時間を要する。
  3. 1.と2.に反し、十分な対価が得にくい(手積み手卸しに相応の手当を支払う荷主は少ない)

 「貨物運送事業において、営業損益段階で黒字の事業者の割合は、44%」──これは、全日本トラック協会がまとめている経営分析報告書(令和2年決算版)の内容である。令和2年がとりわけ悪い結果だったわけではない。同報告書は毎年発表されているが、多少の上下はあれど、黒字事業者の割合は半数を行き来している。

 既に多くの人がご存知のとおり、トラックドライバー不足は深刻である。
 手積み手卸しを行う運送会社は、トラックドライバーも集めにくい。経営の観点から考えると、十分な対価も得られない手積み手卸しが運送会社から敬遠されるのも当然だろう。

 もちろん、多くの荷主は、手積み手卸しが嫌われていることを知っている。
 すでにパレタイズ実現などにより手積み手卸しを解消した荷主もいるが、まだ一部に留まる。

  • 荷姿が悪く、パレタイズや箱詰めが難しい。
  • パレタイズや箱詰めをすると、積載効率が下がる。

 日本人は、仕組みを設けるのではなく、労働者個人の高い技能に頼り、労働生産性の向上や問題解決を図る傾向があると筆者は考えている。

 積み付けの問題にしても、現場ではトラックドライバーや倉庫作業員が日々作業を行う中で技能を高め、結果として高い積み付け品質を実現しているケースが見受けられる。そういった現場では、パレタイズ等による標準化を図ろうとしても、手作業による積み付けと同等の効率性と品質を再現するのは、とても難しい。

物流品質を運送会社に委ねるリスク

 手積みには、別の課題もある。

 「物流の品質を、運送会社に委ねること自体がリスクです」──ある量販店では、自転車を店舗間輸送する際の梱包を、店員自身が行うように変更し梱包資材を新たに開発した。これは、その理由を問われた店長の言葉である。

 その量販店では、これまで自転車の梱包を運送会社のドライバーに委ねてきた。店員の手間を考えても、それがベストだと考えていた。

  • 梱包の品質レベルが、トラックドライバー自身の梱包技術レベルに依存すること
  • 他の運送会社に依頼できず、梱包技術を備えた運送会社だけにしか店舗間輸送を依頼できないこと。

 その量販店は、これらをリスクと考え始めた。

 店舗間輸送は、在庫と販売機会損失を抑えるために用いられる、店舗運営の武器でもある。その武器が、特定の運送会社(さらに言えば、特定のトラックドライバー)に依存することは、確かにリスクだろう。

 そこで同社では、自転車用の梱包資材を開発し、特別な技術を持たない店員であっても、安全な自転車梱包と店舗間輸送を実現できるようにしたのだ。

 梱包や包装であれば、資材の開発によって、荷主自身がコントロールしやすい部分だとは思う。
 だが、積み付けとなると、さらに熟練した技術を必要とする業務であり、標準化するハードルはさらに高い。

 だからこそ、ITやソリューションのチカラを借りる必要があるのだ。

なぜ、積み付けの標準化にITのチカラが必要なのか?

 すでに申し上げたとおり、筆者自身は積み付けシステムに対し懐疑的であった。「使えるは使えるのだろうけど、それは形状に恵まれた一部の貨物や、積み付け条件次第なのだろう」というのが、筆者の本音であった。

 クライアントから要望され、積み付けシステムについて調査したこともあった。しかし、海上コンテナのような定型化された貨物、もしくは種類は多くとも箱詰めされた貨物のパレタイズなどでしか効果を発揮しにくいものであると、当時の筆者は結論した。これはきっと、積み付けマニュアルの作成を諦めた、自分自身の過去にもバイアスされた判断だったのだろう。

 属人化の排除と標準化の推進は、物流業界に限らず、多くのビジネスシーンで必要とされている。そしてこれを推し進めようとすれば、自ずとITのチカラを借り、システム化を実現することが、今の時代にマッチした現実的な選択肢である。

 「だが、本当に積み付けのIT化なんてできるの?」──ITの必要性について、筆者は疑っていない。疑っていたのは、システム化の実現可能性であった。

 この疑念は、ある物流メディアの依頼により、構造計画研究所の「PackingSim」の事例を取材したことで晴れた。「PackingSim」は、窓やサッシ部材を製造する大手建材メーカーにおいて、パレタイズを実現した上で、手積み手卸し時に比べて17%のコストダウンを実現したというのだ。

 その秘密が、「PackingSim」に限らず、構造計画研究所のソリューションが備える「セミパッケージ+カスタマイズ」を実現するエンジンの強みにある。

構造計画研究所の言う「エンジン」とは?

 構造計画研究所は、オペレーションズ・リサーチという技術を核として、建築、製造、物流などの課題解決を実現する会社である。

 「曖昧な現実を科学する」──これは構造計画研究所の採用ウェブサイトに掲げられたキャッチコピーである。そのとおり、現実社会におけるさまざまな課題に対し、数学的に解析することで、最適な解を導くのが構造計画研究所のコアであり、これを実現するための演算機能をパッケージ化したのがエンジンである。

 構造計画研究所には、社会課題の解決に貢献するさまざまなエンジンがある。
 このエンジンをコアに、お客さまの課題解決のためにカスタムオーダーしたソリューションを提供するビジネスを称して、「セミパッケージ+カスタマイズ」と呼んでいる。

 積み付けソリューションに話を戻そう。
 ある事例では、エンジンの変更によって、お客さまにとって最適な積み付けシステムを実現したそうだ。具体的に言うと、3次元で積み付けを演算するエンジンから、2次元演算エンジンに変更したと言う。

 一般論ではあるが、システムのカスタマイズとは、「機能の追加」ないし「チューニング設定の変更(パラメーターの変更)」を指す。システムの演算機能を担うアルゴリズムの変更を行うソリューションベンダーは稀だし、ましてやエンジンそのものを変更するというのは、筆者はほとんど聞いたことがない。

 この実践力は、特筆すべきだろう。

 と、ここまでは貨物の積み付けという課題に対し、技術的な観点から論じてきた。
 だが、貨物の積み付けは、熟練した職人肌の人々が持つ技術を、どうやって暗黙知から形式知へと翻訳し、標準化するのかという課題でもある。つまり、高い技術、高度なエンジンを持っているだけでは解決できない。

 構造計画研究所の強みは、エンジンなどの技術力だけではない。
 次項では、「薬屋ではなく医者である」と自負する構造計画研究所の課題解決能力について考えよう。