2023.03.06
WMS(倉庫管理システム)とは、在庫管理をはじめとした、倉庫内業務を一元管理するシステムです。この記事では、WMSについての基礎知識、メリットとデメリット、提供形態、選定ポイント、ERPやTMSとの違い、課題をご紹介します。
WMS(倉庫管理システム)とは
WMSは、倉庫管理システムのことで、正式名称であるWarehouse Management System(ウェアハウス・マネジメント・システム)の頭文字をとってWMS(ダブリューエムエス)と読みます。
在庫管理をはじめとした、倉庫内業務を一元管理するシステムです。
WMSは、在庫管理、入庫・出庫・転送の作業管理、棚卸管理などの倉庫管理業務を自動化し、効率化するために使用されます。倉庫管理業務を一元管理することにより、管理工数の削減によるスピードアップと、管理人員削減によるコスト削減効果が見込まれます。
倉庫管理のDX化を進める上で、欠かすことのできないシステムとなっています。
WMS(倉庫管理システム)のメリット
WMSには以下のようなメリットがあります。
1.倉庫管理のDX化
2.在庫管理の効率化
3.入庫・出庫・転送の時間短縮
4.リアルタイムな状況把握
5.人的コストの削減
1.倉庫管理のDX化
WMSの導入により、倉庫管理をDX化することができます。在庫状況などをデジタルデータで管理することにより、他システムとの連携も可能になり、倉庫管理業務をより効率化することができます。
2.在庫管理の効率化
商品の位置や数量を管理するためにバーコードやRFIDなどの自動認識技術を利用することで、人的な集計ミスを大幅に削減することができます。
3.入庫・出庫・転送の時間短縮
WMSにより商品の場所や数量が明確に管理されるため、入出庫作業時間を短縮することができます。
4.リアルタイムな状況把握
WMSでは、倉庫内の商品の流れや在庫状況をリアルタイムにモニタリングすることができます。状況を正確に把握することで、返品や不良品などの突発的なトラブルにも的確に対応することが可能です。
5.人的コストの削減
管理業務の効率化により、少人数のスタッフでも管理業務を行うことができるので、人的コストの削減につながります。
WMS(倉庫管理システム)のデメリット
WMSには以下のようなデメリットがあります。
1.費用
2.導入・運用に時間がかかる
3.継続的なメンテナンス
1.費用
WMSの導入には、ソフトウェアの購入費用やライセンス費用、サーバ管理費用やクラウド利用料などのコストがかかります。また、WMSをスタッフが使うためのトレーニング費用も考慮に入れておかなければなりません。
2.導入・運用に時間がかかる
WMSの導入・運用には、データの調整やシステムの設定などが必要です。また、操作を覚えるまでのトレーニングも必要で、実際に稼働するまでは、多くの時間がかかります。
3.継続的なメンテナンス
システムのバージョンアップやセキュリティ対策などの継続的なメンテナンスが必要となります。
WMS(倉庫管理システム)の提供形態
WMSの提供形態には、
・オンプレミス型
・パッケージ型
・クラウド型
があります。
・オンプレミス型
オンプレミス型は、自社内サーバーに独自のシステムを構築するWMSです。
自社の倉庫業務に沿った機能を構築することができるので、違和感なく導入することができます。
デメリットはシステムの開発にコストと時間がかかることです。また、操作トレーニングも主に自社で行う必要があります。
・パッケージ型
パッケージ型は、WMSのパッケージを購入することで、導入が可能です。
パッケージには各社から多くの種類が販売されているので、自社の業務に合ったパッケージを購入することができます。
パッケージとして販売されているので、導入コストが見えやすいのと、パッケージによってはトレーニングも用意されているので、社員の教育コストを下げることができます。
デメリットは、自社の業務内容に対応する機能がない場合は、他の機能で代替するか、カスタマイズが必要になることです。機能のカスタマイズにはコストと時間がかかります。
・クラウド型
クラウド型は、インターネット上のクラウドにて提供されるWMSです。
登録後、すぐに利用することが可能です。サブスクリプション型で提供されるので、初期コストを抑えることができます。
また、アップデートも随時行われるので、最新の機能を使うことができます。
デメリットは、使用している間は、ずっと利用料がかかることです。
また、カスタマイズに対応してもらいにくいことです。
WMS(倉庫管理システム)を選ぶポイント
WMSを選ぶ際には、以下のようなポイントを考慮することが重要です。
1.機能
2.スケーラビリティ
3.操作性
4.サポート
5.システム連携
1.機能
WMSが提供する機能が自社のニーズに合っているかを確認しましょう。事業規模によってはシンプルな機能の方がかえって効率化に結びつくケースもあります。
2.スケーラビリティ
自社の事業規模が拡大した場合にも、企業が成長した場合にも拡張して対応できるWMSを選ぶことが重要です。
3.操作性
WMSを操作するために必要なトレーニングコストも考えておかなければなりません。同じ機能であったとしても、操作のしやすさにより、効率への影響は少なくありません。
4.サポート
システムの導入後は、安定的な運用が重要です。何かトラブルがあったときに、すぐに的確なサポートが受けられるかどうかは重要なポイントです。
5.システム連携
自社で使用している基幹システムとの連携ができるシステムを選びましょう。すでに運用されている基幹システムとの連携がうまくできないと、かえって非効率になってしまうことが考えられます。
これらのポイントを考慮することで、自社に適したWMSを選ぶことができます。
WMSとERP(企業資源計画)との違い
WMSは、倉庫管理を支援するためのシステムで、在庫管理、入庫・出庫・転送の作業管理、棚卸管理などの倉庫運用業務を自動化し、効率化するために使用されます。
ERPは、企業資源計画と呼ばれ、企業全体の経営を統合管理するためのシステムです。財務管理、人事管理、生産管理、販売管理などの業務を統合管理するために使用されます。
WMSのデータはERPシステムに統合されることで、在庫管理、物流管理、生産管理などの各部門の関連データを統合管理することが可能になります。ERPは、WMSと組み合わせて使用することで、倉庫運用管理と企業全体の経営管理を統合することができます。
WMSとTMS(輸配送管理システム)との違い
WMSは倉庫管理システム、TMSは輸配送管理システムと訳されるとおり、WMSは倉庫内での物流業務の最適化に特化したシステムで、TMSは輸送ルートや輸送スケジュールの最適化に特化したシステムです。
WMSは、倉庫管理システムと呼ばれ、倉庫内の物流業務の最適化を行うシステムです。倉庫内の在庫管理、入出庫管理、荷役管理など、倉庫に関連する業務を効率化するためのシステムです。
TMSは、輸配送管理システムと呼ばれ、輸送ルートや輸送スケジュールの最適化を行うシステムです。輸送計画の立案、輸送依頼、輸送状況のモニタリング、納品管理など、輸送業務を効率化するためのシステムです。
WMSとTMSを連携して活用することで、物流業務において、より一層の効率改善が期待できます。
WMS(倉庫管理システム)の課題
WMSには以下のような課題があります。
1.導入コスト
2.多機能ゆえの複雑さ
3.現場との連携
4.ヒューマンエラー
1.導入コスト
WMSを導入し運用していくには、導入コスト、カスタマイズコスト、運用コスト、保守コストなどの費用がかかります。また、それぞれ専門の技術者が必要なので、人的コストも考慮しなければなりません。
2.多機能ゆえの複雑さ
WMS導入企業でよく聞かれる課題は、多くの機能を使いこなせないことです。多機能になればなるほど、庫内物流全体の業務をシステムに取り入れるまでに時間がかかり、効率的に機能するまで、日々の調整が必要になります。
3.現場との連携
WMS上ではデータで管理されますが、当然現場との正確なデータ連携が必要となります。ピッキング作業など、手作業が加わった場合でも、正確にデータ管理できる体制を整えなければなりません。
4.ヒューマンエラー
在庫管理のためのピッキング作業など、人的な手作業が必要な業務では、ヒューマンエラーが起きてしまう可能性があります。
これからのWMSに求められること
スマートフォンの普及により、いつでもどこでも当たり前のようにネットショッピングができる時代になりました。
また、今後、ドローンなどの無人モビリティによる配送が実現する未来も見えてきており、さらに物流業務の効率化が求められています。
時代の変化とともに、物流の形態も変化していきます。
手書きの在庫管理の時代から、現在はバーコードやハンディターミナルが当たり前になっているように、物流の形態も変化していきます。
これからのWMSは、物流の変化に柔軟に対応しつつ、属人化されないようなシステムが求められていくでしょう。
WMS(倉庫管理システム)まとめ
WMSは庫内物流を管理する倉庫管理システムで、現代の物流業務を行ううえで欠かせないものとなっています。
一方で多機能化により、操作が複雑化してしまい、WMSを使いこなせていない会社が多数存在することも事実です。
巣ごもり需要をはじめとしたネットショッピングの拡大により、物流の取り扱い量が爆発的に増加しています。物流の増加にともない、トラックドライバーや倉庫作業者の人手不足も慢性化しています。
物流量が増え、人手不足であるという状況において、物流業務の効率化は緊急の課題となっています。
複雑化する物流業務の課題解決のため、倉庫業務を効率化できるWMSが求められています。
倉庫内物流だけではなく、物流現場業務の生産性をトータルで効率化していくことが、これからの物流業界には必要です。正しくDX化を推進し、次の時代の物流を構築していきましょう。
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