導入事例 青果物輸送を中継輸送で効率化

導入事例 青果物輸送を中継輸送で効率化

- 東海ローディング株式会社 様 -

執筆:内海 正樹

青果物を運ぶのは使命 効率的な中継輸送に挑む

鮮度維持や、天候・季節による荷量の変動にも対応が必要など、青果物輸送は物流事業者やドライバーの負担が特に大きいとされる分野です。「物流の2024年問題」の影響で輸送能力の低下が危惧される中、東海ローディング(愛知県安城市)は輸配送計画システムを活用した中継輸送を導入することで野菜など青果物輸送の効率化を目指しています。この記事では、プロジェクトに至るまでの経緯や取り組みの内容、関係者の思いを紹介します。

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東海ローディング本社前に立つ鈴木康嗣代表取締役社長

「2024年問題」 物流の改善は待ったなし

「我々には青果物を届ける使命があり、物流の改善は待ったなしでした」。同社の鈴木康嗣社長は、プロジェクトにかける思いを明かしてくれました。

1963年創立の東海ローディングは、JAあいち経済連グループの物流事業者です。愛知県の農業産出額は3114億円で全国8位(2022年)、中部地方では最上位。同社は国内有数の食糧基地において、主に東は関東、西は近畿地方までの青果物輸送を担っています。

人手不足 運送を断られるケースも

東海ローディングは大型車をはじめ自社で100台以上の車両を保有していますが、県内の集出荷場から各地の卸売市場へ青果物を運ぶためには、協力会社による働きが欠かせません。ところが、ここ数年、「仕事を受けるのは難しい」と断られてしまうケースが増えてきました。大根貞司取締役兼物流開発室室長は「働き方改革や人手不足が背景にありました」。青果物輸送は、天候や季節によって運ぶ量の変動が大きいことで運賃収入が不安定な側面もあります。また、長距離輸送や荷積み、積み下ろしの手間が大きいこともあり、敬遠されてしまったとみられます。

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左から大根貞司取締役兼物流開発室室長、鈴木康嗣代表取締役社長、橋本健取締役兼企画管理部長

働き方改革の一環で2024年から、トラックドライバーに時間外労働の上限(年間960時間)規制が適用されました。1日の拘束時間の制限も13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回までが目安)と、従来よりも厳しくなりました。今までの運び方では遠方の市場に1日で運べなくなってしまうこともあります。

輸送効率化へ DX化が急務

当たり前のように食卓や飲食店に並んでいた愛知県産の青果物が、新鮮な状態で運べなくなるかもしれない-。東海ローディングは危機感を抱き、輸送業務を効率化するために「輸配送や積み付けをDX化するシステムの導入」が急務となりました。

情報収集を進める中で出合ったのが構造計画研究所(KKE)です。営業企画部兼物流開発室の日下敦之部長らは2023年、東京で開かれた物流展示会を訪れて各ブースを回りましたが、期待に応えてくれそうなソリューションはなかなか見つかりませんでした。

そんな中、会場を後にする直前にKKEのブースを訪れて輸配送計画システム「ALPS Route」の説明を受け、「何とかなるかもしれない」と光明を見出しました。同システムは企業や課題ごとにシステムをカスタマイズし、簡単かつスピーディーに効率的な配送ルートやトラック台数を計算して配車担当者を支援してくれます。日下部長は「輸送効率化だけでなく、積み付けも考慮して検討してくれるところに魅力を感じました」。

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インタビューに答える鈴木康嗣代表取締役社長。「JAグループの一員として、青果物を届けるのは我々の使命」

カスタマイズが決め手 両社で二人三脚

実はKKEと出合う前に、汎用的なパッケージ販売の配車システムを試していました。ですが期待した効果は得られそうになく、白羽の矢を立てたのが、カスタマイズに秀でたKKEのシステムです。かくして「ALPS Route」をベースとした青果物輸送計画システムの構築に向け、両社の二人三脚がスタートしました。

「青果物を効率的に運ぶ」。言うは易く行うは難しです。天候などによる出荷量のばらつきを見込んで余裕を持たせてトラックを手配、積載率を上げるために1台のトラックで複数の集出荷場や市場を回るなど、そもそも同社の配車担当者は経験に基づいて、より効率が上がるよう日々の計画を立案していました。鈴木社長も「生産計画に基づいて荷量が計算できる一般的な品物と違い、必要なトラック台数を決めるのはとても難しい。その上、『2024年問題』に対応するためにドライバーの拘束時間を短縮する必要もあった」と、プロジェクトの難しさを語ります。

輸送効率化 中継輸送がキーワード

このプロジェクトで輸送効率化のキーワードになったのが「中継輸送」です。中継輸送とは中継地点でトラックからトラックに荷物を積み替えるなどして長距離を運ぶ形態で、ドライバーの拘束時間の削減につながることから国も推進しています。東海ローディングではこれまで本格的な中継輸送は導入していませんでしたが、KKEのコンサルタントが課題をヒアリングする中でも有効な効率化の手段となることが見えてきました。

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左は中継輸送導入前の模式図で、集出荷場から市場まで同じトラックが運行。右は集出荷場を回るトラックと、市場に届けるトラックが分かれている中継輸送の模式図

これまでは同じトラックが複数の集出荷場を回って青果物を載せた上で遠方の市場まで届けていましたが、「ALPS Route」を用いて中継輸送を導入することで同社の輸送は大きく変貌します。具体的には、集出荷場を回る効率性を高めつつ、中継地点として選定した愛知県内5カ所の集出荷場で荷物を積み替え、遠方の市場まで輸送する方式を取り入れます。中継地点に荷物を集約することで積載率が向上し、中継地点前後で別々のトラックが輸送することで、それぞれドライバーの拘束時間が短くなります。

トラック台数の増加 最小限に

中継輸送の導入でドライバーの拘束時間は減りますが、中継地点を挟んで別々のトラックが運ぶため、必要なトラックの台数が増える場合もあります。実際にKKEがシステム上でシミュレーションした結果でもトラックの台数は5%増えましたが、効率的な輸送ルートを導き出すことで増加を最小限に抑えることができました。荷物を中継することで増加の懸念があった荷役時間と、ドライバー1人当たりの拘束時間は、それぞれ5%削減。燃料費や人件費の高騰にあえぐ物流事業者にとって、「トータルコストの増加を抑えることができる」(鈴木社長)のは大きな成果となりそうです。

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東海ローディングの協力会社のトラック。キャベツなど様々な青果物が積み込まれています

中継輸送を導入することで輸送のパターンは飛躍的に増えるため、人の手で効率的な配車計画を組むのは難しくなります。しかし、熟練していない配車担当者でもシステムが支援するため、鈴木社長は「配車は経験と勘が物を言う業務ですが、システムの力を借りることで一定の知識があれば配車業務を担えるようになります。属人化せず分担できる仕組みにしていきたいですね」と言います。

配送と積み付け 難易度高く

このシステムは配送だけでなく、荷物を高い積載率で載せる積み付けについても考慮しています。同社の取扱量は、愛知県の主要青果物産地である東三河地域に限っても年間72品目、約173,000㌧に上るなど膨大で、本来であれば品物のデータ化にも多くの手間がかかります。

配送と積み付けを同時に考慮して最適化するのは、条件が複雑となり難易度の高い問題です。ただ、突破口になった材料がありました。それが「キャベツ換算」です。愛知県は収穫量で国内1、2を争うキャベツの一大産地。同社はキャベツ以外の青果物を運ぶ場合、キャベツ何ケース分に相当するか品物ごとの基準を把握しています。このデータを利用することでシステム構築に向けて各青果物ごとの重量や容積をあらためて把握する必要がなく、KKEは主に輸配送に注力して検討を進めることができました。

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東海ローディングが運んでいるキャベツ。愛知県はキャベツの一大産地

「消費者に新鮮な野菜を」「農家組合員の経営安定に」

プロジェクトは今春から佳境を迎え、中継輸送の青果物輸送計画システムを本格導入して実際にトラックが走る日が近づいてきました。鈴木社長は「我々の思いを実際に形にしてくれて、KKEの理解度の高さを感じています。このシステムを利用することで消費者に新鮮で安全な野菜を届け、我々の理念である農家組合員の経営安定につなげていきたいですね」。

また、このプロジェクトの先には新たな構想も見据えています。キャベツなど秋冬の流通量が多い愛知県ですが、近隣には夏場の流通量が多い地域もあります。そして愛知県は日本のちょうど中央部。鈴木社長は「愛知県は日本の輸送のハブになれる場所。愛知の荷物が少ない時期に他地域の荷物を中継して運ぶことで積載率を上げることも可能かもしれません」とした上で、「将来的に青果物だけでなく一般貨物の混載もイメージしています。新しい輸送の仕組みやネットワークを構築することで、商品や産地の価値を高めることにも貢献していきたいと考えています」。

青果物の中継輸送を通じた東海ローディングの意欲的な挑戦はスタートしたばかり。運び続ける使命を帯びた同社と、効率性を担保するシステムの両輪が、愛知、ひいては日本の青果物物流を前に進めていきます。


取材日:2025年3月

東海ローディング株式会社について
創立:1963年4月
本社所在地:愛知県安城市
ホームページ:http://www.tokailoading.co.jp/

※本インタビュー内容は全て取材時点の情報に基づくものであり、最新の情報とは異なる場合がございます。あらかじめご了承ください。